📖 クロスを先に、給湯器は後に
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退去後の部屋で、若い大家さんは見た目を優先し、クロスと床の全面張替えに30万円をかけました。古い給湯器は「まだ動くし、次でいいか」と後回し。入居は決まりましたが、3か月後の真冬に給湯器が故障し、お湯が出ない部屋から入居者は退去。また空室が2か月続きました。家賃5万円で10万円の損失に、緊急交換の割増が乗りました。
壊れるたびにその場で手を打ち、見た目を整えて安心する。一見、賢い節約に見えますが、修繕の優先順位を取り違えると、空室は長引きます。本記事では、元設備設計士で、札幌で築古物件を自主管理する筆者が、空室を長引かせる優先順位の間違い、「入居に直結するか」で分ける順番、そして限られた予算の配分の考え方を整理します。
読み終える頃には、直したい場所のリストを「順番」に変えられるようになり、同じ予算で空室を短くできます。
📖 この記事でわかること
見た目を優先して設備を後回しにする間違いが、なぜ空室を長引かせるのかがわかります。安全・住めるか・入居に直結・見た目の4段階で分ける順番、北海道で上位に来る給湯器と凍結対策、30万円の予算の配分例、修繕リストの作り方を表とチェックリストで確認できます。
⚠️ 考え方: 空室を長引かせる優先順位の間違い
空室を長引かせる大家さんの共通点は、修繕を「目につく順」でやることです。クロスの汚れ、床の傷、古い照明。目に入るものから直すと、見た目はきれいになりますが、住むための設備が後回しになります。冒頭の例では、きれいな部屋に入った入居者が、真冬にお湯が出なくなって出ていきました。
間違いのパターンは3つ。見た目を優先して設備を後回しにする(クロス全面、給湯器は放置)。寿命間近の設備を応急処置でしのぐ(3度目の冬に完全故障)。全部直そうとして資金が先に尽きる(給湯器の予算が残らない)。どれも、悪気ではなく「順番の基準がない」ことから起きます。基準があれば、同じ30万円でも配分が変わります。
ある大家さんは、見た目を優先してクロス補修ばかり進め、寿命間近の給湯器は応急処置で先送りしました。3度目の冬にその給湯器が完全に故障し、入居者は退去、空室が2か月。家賃5万円なら、それだけで10万円の損失です。応急処置の積み重ねは、費用の積み重ね、空室の長期化、物件価値の低下という3つの問題を生みます。
筆者が管理する物件でも、古いトイレの水漏れをパッキン交換でしのいでいた時期がありました。そのとき気づいたのは、応急処置の「安心感」が判断を鈍らせるということです。直ったように見えるから、つい先送りしてしまう。結局、便器ごと交換して約4万円。再発の不安からは解放されました。
見た目は、内見のときに効きます。設備は、住んでから効きます。内見で決まって3か月で退去する部屋と、内見で少し迷って3年住む部屋。どちらが空室を短くするかは明らかです。内見で決まることと、住み続けてもらうことは、別の工事で決まります。
💡 ポイント
空室を長引かせるのは「目につく順」の修繕。見た目は内見で効き、設備は住んでから効きます。順番の基準がないことが、応急処置の繰り返しと資金切れを招きます。
✅ やり方: 「入居に直結するか」で分ける4段階の順番
修繕の順番は、4段階で分けます。第1段階は「安全」に関わるもの。火災報知器の電池切れ、手すりのぐらつき、階段の破損、漏電の疑い。放置すると入居者がケガをし、大家の責任を問われます。数千円で済むものが多いのに、最も重い。
第2段階は「住めるか」に関わるもの。給湯器・ボイラー、水漏れ、雨漏り、暖房、鍵。これが動かないと、入居者は生活できません。北海道では、給湯器と凍結対策がここに入ります。冬にお湯が出ない部屋は、その日のうちに動かないと入居者の生活が止まります。
第3段階は「入居に直結するか」。内見で決め手になる水回りの清潔感、汚れたクロス1面、古い照明、臭い。ここは費用対効果で選びます。トイレの温水洗浄便座化10万円、アクセントクロス1面2万円、クリーニング3万円。第4段階が「見た目」の残り。床全面、クロス全面、間取り変更。予算が余ったときだけ。この段階は、内見の3分間で効く工事だけに絞るのがコツです。
同じ場所を2回以上直していたら、それは第2段階の「本修繕」に上げるサインです。設置から耐用年数(給湯器なら約10年)を超えている、直しても1年もたない、も同じ。「この処置で何年もつか」を業者に聞き、1年もたないなら交換を第2段階に入れます。
冒頭の30万円を配分し直すと、給湯器の交換18万円(第2段階)、クロス1面2万円と清掃3万円(第3段階)、残り7万円は次の修繕積立。床の全面張替えは第4段階なので見送り。この配分なら、入居は決まり、冬に電話は鳴りません。
| 段階 | 該当する修繕の例 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 1. 安全 | 火災報知器、手すり、階段、漏電 | 1,500円〜2万円 |
| 2. 住めるか | 給湯器、水漏れ、雨漏り、暖房、凍結対策 | 1万2,000円〜40万円 |
| 3. 入居に直結 | 水回りの清潔感、クロス1面、照明、清掃 | 2万円〜15万円 |
| 4. 見た目の残り | 床全面、クロス全面、間取り変更 | 予算が余ったときだけ |
📋 マインド: 限られた予算の配分と、修繕リストの作り方
基準が分かれば、あとは1枚のリストにまとめるだけです。直したい場所を全部書き出す。それぞれに「安全」「住めるか」「入居に直結」「見た目」のどれかを書く。上の段階から順に、予算を配る。予算が尽きたところで線を引き、下は次の退去か次の年に回す。
リストは、退去のたびに更新します。入居中は「安全」と「住めるか」だけを見て、「入居に直結」と「見た目」は退去後にまとめてやる。この分け方で、入居中の工事は最小限になり、退去後の工事は一度で済みます。「今すぐ直す」と「次にまとめて直す」を分けるだけで、修繕費は年間で2割ほど減ります。
予算の配分で迷ったら、「この修繕をしなかったら、次の入居者は困るか」と一度だけ自分に聞いてください。困るなら上、困らないなら下。築古物件は、新築同等のグレードに戻す必要はありません。次の入居者が困らない最低限の水準で十分です。この問いは、業者の提案を受けるときにも、そのまま使えます。
設備設計の実務でも、改修の優先順位は「法令・安全」「機能」「快適」「意匠」の順で決めます。大家の修繕もまったく同じで、意匠(見た目)は最後です。この順番を守るだけで、限られた資金が「守り」と「攻め」に正しく配分されます。
冒頭の大家さんは、次の空室で給湯器を先に交換し、クロスは1面だけ、清掃を入れて、募集3週間で決まりました。「同じ30万円なのに、順番を変えただけで結果が全部変わった」と話していました。今日やることは、自分の物件で直したい場所を全部書き出して、4段階のどれかを書き込むことです。
- ✅ 直したい場所を全部書き出し、安全・住めるか・入居に直結・見た目の4段階を書き込んだ
- ✅ 同じ箇所を2回以上直しているもの、耐用年数を超えた設備を「住めるか」に上げた
- ✅ 北海道の冬に向けて、給湯器と凍結対策を上位に置いた
- ✅ 上の段階から順に予算を配り、尽きたところで線を引いた
- ✅ 入居中は安全と住めるかだけ、退去後に入居直結と見た目をまとめてやると決めた
- ✅ 退去のたびにリストを更新する習慣にした
📌 この記事のまとめ
- 空室を長引かせるのは「目につく順」の修繕です。見た目は内見で効き、設備は住んでから効きます。きれいな部屋でも、お湯が出なければ住めません。
- 順番は安全・住めるか・入居に直結・見た目の4段階。同じ30万円でも、給湯器18万円+クロス1面2万円+清掃3万円に配分すれば、入居は決まり冬に電話は鳴りません。
- 直したい場所を全部書き出して4段階を書き込み、上から予算を配る。まずは今日、自分の物件のリストを1枚作ることから始めてください。
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