📖 「来週見に行きます」で、1か月
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「お風呂の換気扇が回らない」と入居者から連絡を受けた若い大家さんは、「来週あたり見に行きます」と軽く返事をしました。ところが仕事が忙しくて1か月放置。浴室にカビが広がり、入居者から「家賃を減らしてほしい」と言われました。換気扇の交換は1万5,000円。放置の代償は、家賃の減額と信頼でした。
入居者から修繕を求められたとき、「何日以内に対応すべきか」を法律は具体的に決めていません。しかし「遅れた分の損害は大家の責任」になる考え方はあります。本記事では、元設備設計士で、札幌で築古物件を自主管理する筆者が、法律上の考え方と実務の目安、緊急度別の対応期限の決め方、そして遅れるときの伝え方と記録の残し方を整理します。法律の解釈は一般的な考え方として書くので、個別の判断は専門家に確認してください。
読み終える頃には、「一次返答は24時間以内、緊急は即日、生活に支障は3日、不便は2週間」という自分の目安を持ち、電話に身構えなくなります。
📖 この記事でわかること
法律に「何日以内」の規定はないが遅れた分の損害は大家の責任になる考え方と、入居者が自分で修繕して費用を請求できる仕組みがわかります。一次返答24時間以内、緊急は即日・生活に支障は3日・不便は2週間という目安、遅れるときの伝え方と記録の残し方を表とチェックリストで確認できます。
⚖️ 考え方: 法律上の考え方と、実務の目安
大家には、入居者が普通に住める状態を保つ修繕義務があります。ただし法律は「何日以内に直す」とは決めていません。決まっているのは考え方で、修繕が必要だと知ったのに相当な期間対応しなかった場合、入居者が自分で修繕してその費用を大家に請求できる、というものです。2020年の民法改正で、この仕組みが明文化されました。
さらに、設備が使えない期間が続けば、その分の家賃の減額を求められることがあります。冒頭の「家賃を減らしてほしい」は、感情的な要求ではなく、この考え方に沿ったものです。業界団体が公表している目安では、お湯が出ない、トイレが使えない、といった状態が一定日数を超えると、家賃の一部減額の対象になるとされています。
つまり「何日以内」の答えは、法律ではなく「遅れた分は大家の負担になる」という損得で決まります。放置した日数が長いほど、減額も、入居者の不満も、退去の確率も上がる。だから、目安を自分で持つ必要があります。
実務の目安は4段階です。緊急(漏水、漏電、冬の給湯器、雨漏り、鍵)は即日。生活に支障(換気扇、コンロ、洗面の水漏れ、網戸の破れで虫)は3日以内に業者の手配。不便(建具の建てつけ、照明のちらつき、収納の扉)は2週間以内。見た目(クロスの小さな傷、色あせ)は次回の退去時か大規模修繕で。
この目安で大事なのは、「直す日」ではなく「返事する日」から期限が始まることです。一次返答は24時間以内。「連絡ありがとうございます。3日以内に業者を手配します」の一言で、入居者の不安は半分消えます。冒頭の失敗は、返事はしたが期限を言わず、その後の連絡がなかったことにあります。
| 緊急度 | 例 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 緊急 | 漏水・漏電・冬の給湯器・雨漏り・鍵 | 即日(一次返答は数時間以内) |
| 生活に支障 | 換気扇・コンロ・水漏れ・網戸 | 3日以内に業者手配 |
| 不便 | 建具・照明のちらつき・収納の扉 | 2週間以内 |
| 見た目 | クロスの小傷・色あせ | 次回の退去時か大規模修繕 |
📅 やり方: 緊急度別の対応期限の決め方
連絡を受けたら、最初にやるのは「緊急度の仕分け」です。安全に関わるか。住める状態かに関わるか。放置すると被害が広がるか。この3つのどれかに当てはまれば緊急で、即日。当てはまらなければ、生活への支障の度合いで3日・2週間・次回に分けます。
北海道では、冬の給湯器と暖房の故障は、他の地域の「生活に支障」ではなく「緊急」です。お湯が出ない、暖房が動かない部屋は、その日のうちに動かないと入居者の生活が止まります。凍結による断水も同じ。冬の間だけ、緊急の範囲を広げておく。
業者の手配には時間がかかります。だから「3日以内」は「3日以内に直す」ではなく「3日以内に業者に見てもらう日を決める」です。部品の納期で2週間かかるなら、「業者が○日に見に来て、部品が届き次第○日頃に交換」と、見通しを伝える。見通しがあれば、入居者は待てます。
設備設計の実務では、不具合の連絡を受けたら「緊急度・原因の見立て・対応の見通し」を24時間以内に返すのが基本です。大家も同じで、連絡→仕分け→一次返答→手配→見通しの共有、という型を作れば、忙しくても抜けません。
自分で判断がつかない不具合は、写真を撮ってもらって業者に送り、「急ぎますか」と聞きます。業者の答えがそのまま緊急度の根拠になり、入居者にも「業者の見立てでは○○なので、○日に対応します」と説明できます。
- ✅ 連絡を受けたら、安全・住めるか・被害の拡大の3つで緊急度を仕分けた
- ✅ 一次返答を24時間以内に返し、対応の見通しを伝えた
- ✅ 緊急は即日、生活に支障は3日、不便は2週間、見た目は次回、と自分の目安を決めた
- ✅ 冬の間は給湯器・暖房・凍結を「緊急」に広げた
- ✅ 部品の納期などで遅れる場合は、見に来る日と交換の見込み日を伝えた
- ✅ 判断がつかない不具合は写真を業者に送り「急ぎますか」を聞いた
🗣️ マインド: 遅れるときの伝え方と、記録の残し方
どうしても遅れることはあります。業者の繁忙期、部品の納期、大雪。遅れること自体は、入居者も理解してくれます。信頼を壊すのは、遅れることではなく、黙っていることです。冒頭の大家さんの失敗は、換気扇を1か月直さなかったことより、1か月連絡しなかったことにあります。
遅れるときの伝え方は、3点セットです。「いつ」(新しい見込み日)。「なぜ」(部品の納期、業者の都合)。「それまでどうするか」(代替の手段、応急処置、必要なら家賃の一部調整)。「換気扇の部品が○日に届く予定なので、交換は○日になります。それまで窓を少し開けて換気をお願いします。ご不便をおかけしてすみません」。この一文で、家賃減額の話にはなりません。
連絡はメッセージアプリかメールで、記録が残る形にします。電話で話した場合も、後で「先ほどの件、○日に対応します」と一文送る。記録があれば、「いつ連絡があって、いつ返事をして、いつ対応したか」を後から示せます。これは入居者を疑うためではなく、対応の遅れを問われたときに、自分を守るためです。
記録は、修繕履歴の表に1行。連絡日、内容、緊急度、一次返答日、業者手配日、対応完了日。6つの日付が並ぶと、自分の対応の速さが見えます。「一次返答まで平均2日」と分かれば、「24時間以内」に縮める工夫ができます。
冒頭の大家さんは、その後、連絡から24時間以内に返事、3日以内に業者の手配をルールにし、遅れるときは3点セットで伝えるようにしました。次の更新のとき、入居者から「対応が早くて助かります」と言われたそうです。対応の速さは、最も安い退去防止策です。今日やることは、いま「返事をしていない連絡」がないかを確認して、あれば一文送ることです。
💡 ポイント
遅れるときは「いつ・なぜ・それまでどうするか」の3点セットで、記録が残る形で伝える。信頼を壊すのは遅れることではなく、黙っていること。対応の速さは最も安い退去防止策です。
📌 この記事のまとめ
- 法律に「何日以内」の規定はありませんが、遅れた分の損害は大家の責任になり、入居者が自分で修繕して費用を請求したり、家賃の減額を求めたりできます。
- 目安は、一次返答24時間以内、緊急は即日、生活に支障は3日、不便は2週間、見た目は次回。北海道の冬は給湯器・暖房・凍結を緊急に広げます。
- 遅れるときは「いつ・なぜ・それまでどうするか」を記録が残る形で伝える。まずは、いま返事をしていない連絡がないかを確認して、一文送ってください。


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