📖 自分で直して、入居者が去った
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台風で屋根の板金がはがれた若い大家さんは、「業者を呼んだら10万円以上かかる」と、ホームセンターの防水テープで自分で応急処置をしました。写真も残さず、見積もりも取らなかった。半年後に雨漏りが再発し、入居者は退去。火災保険は「損害の証明ができない」と使えず、約60万円を自腹で払いました。
修繕費を浮かせようと自分で直したのに、かえって悪化して入居者が去る。そんな大家さんを、筆者は何人も見てきました。DIYには「やっていい範囲」と「絶対にやってはいけない範囲」があります。本記事では、元設備設計士で、札幌で築古物件を自主管理する筆者が、DIYが退去につながる3つの理由、資格や安全の面で業者に任せるべき工事と無資格工事のリスク、そしてDIYでよい場所と失敗しない進め方を整理します。
読み終える頃には、「簡単そう」と「やっていい」を分けて考えられるようになり、線引きを守ったDIYで堂々と修繕費を抑えられます。
📖 この記事でわかること
DIYが退去につながる3つの理由(仕上がりの再発・生活への影響・保険が使えない)がわかります。電気・ガス・給排水の直結・屋根と外壁など業者に任せる工事と無資格工事のリスク、クロス・パッキン・照明などDIYでよい場所、写真・保険連絡・空室で試すという進め方を表で確認できます。
⚠️ 考え方: DIYが退去につながる3つの理由
「これくらい自分でやれば数千円で済む」。自主管理の大家さんなら当然の気持ちです。しかしDIYが退去につながる理由は3つあります。1つ目は「仕上がりの再発」。屋根や配管のような、見えない場所で水を止める工事は、テープや市販の補修材では半年しかもちません。再発した雨漏りは、入居者にとって「直っていない部屋」です。
2つ目は「生活への影響」。入居中の部屋でDIYをすると、作業の日程、騒音、ホコリ、仕上がりの見た目が、全部入居者の目に触れます。プロなら1日で終わる作業が週末3回になれば、入居者は「この大家は素人」と感じます。信頼が下がると、次の更新で出ていきます。
3つ目は「証拠がなく保険が使えない」。台風や大雪による突発的な破損は、火災保険の風災・雪災で補償されることが多い。ところが被害を見つけてすぐ自分で直し、写真も見積もりも残さないと、「損害の証明ができない」と申請が否認されます。冒頭の60万円は、写真を撮って保険会社に連絡していれば、大部分が保険で戻った可能性がありました。
筆者自身も駆け出しのころ、同じ失敗をしました。屋根がはがれたとき、費用を惜しんで自分で応急処置をし、写真も残さなかった。あのとき痛感したのは、安さより「正しい順番」だということです。直す前に記録する、保険会社に連絡する、見積もりを取る。この順番を守れば、DIYで直す判断も、業者に頼む判断も、損をしません。
DIYの目的は修繕費を抑えることです。しかし退去1件で家賃2か月分、保険が使えなければ数十万円が消えます。「安く済ませた」が本当に安かったかは、退去と保険まで含めて計算しないと分かりません。
💡 ポイント
DIYが退去につながるのは、仕上がりの再発・生活への影響・証拠がなく保険が使えない、の3つ。直す前に写真、保険会社に連絡、見積もり。この順番が安さより大事です。
🔌 やり方: 資格や安全の面で、業者に任せるべき工事
修繕には「資格を持つ人しか触れてはいけない工事」があります。理由は、感電・火災・ガス漏れなど、人命に関わる事故を防ぐためです。電気工事(コンセントの交換や配線)は電気工事士の資格が必要。ガス工事(ガス管や機器の接続)は専門の資格が必要。給排水工事(水道本管に直結する部分)は指定の業者しかできません。
古いコンセントの交換は、一見簡単ですが、これも電気工事士が必要な「工事」です。「簡単そう」と「やっていい」は、まったく別物です。ある大家さんが退去後の部屋で自分でコンセントを増設し、数か月後に配線の発熱から小火が発生。火災保険は「無資格工事が原因」として満額下りず、入居者への賠償と修繕で約200万円の自己負担になった例があります。
無資格の電気工事は法律違反で罰金の対象になりますが、本当に怖いのは罰金ではなく事故時の責任です。火災保険が免責となり保険金が下りない。入居者にケガや損害が出れば数百万円の賠償責任を負う。最悪の場合、人命に関わる。数千円の節約のために、数百万円のリスクを背負うことになります。
資格が不要でも、業者に任せるべき工事があります。屋根と外壁(高所作業で落下の危険があり、防水の仕上がりが素人では持たない)。給湯器やボイラー(寒冷地の直圧式は特に)。構造に関わる部分(壁を抜く、床を支える)。北海道では凍結したボイラーや配管を急いで直したくなりますが、ガスと水道の直結部分は無資格で触れません。寒冷地ほど、信頼できる地元業者を1社確保しておく必要があります。
元設備設計士として付け加えると、電気とガスと水の「直結部分」は、事故が起きたときに被害が自分の部屋で終わりません。階下、隣室、建物全体に広がります。だからこそ資格が法律で決められています。線引きは、大家を縛るためではなく、大家と入居者を守るためにあります。
| 工事の種類 | DIYの可否 | 理由・費用の目安 |
|---|---|---|
| 電気(コンセント・配線) | 不可(電気工事士) | 感電・火災。業者4,000〜8,000円〜 |
| ガス(管・機器の接続) | 不可(専門資格) | ガス漏れ・爆発 |
| 給排水(本管直結) | 不可(指定業者) | 漏水が階下へ。業者数千円〜 |
| 屋根・外壁・ボイラー | 業者に任せる | 落下・防水不良・凍結 |
| クロス・パッキン・照明・小物 | 可(資格不要) | 材料費のみ。空室で試す |
✅ マインド: DIYでよい場所と、失敗しない進め方
ここまで読んで不安になった方も、安心してください。資格がなくても、合法的に自分でできる修繕はたくさんあります。クロス(壁紙)の張替えと部分補修。蛇口のパッキン交換(部品代は数百円)。照明器具やLED電球の交換。ドアノブや蝶番の調整。網戸の張替え。クッションフロアの部分補修。壁の穴の補修(パテ)。カーテンレールや棚の取り付け。
進め方で守ることは3つ。1つ目、DIYは空室でしか試さない。入居中の部屋で練習すると、仕上がりも日程も入居者の目に触れます。空室で1面のクロスを張ってみて、自分の腕を知ってから範囲を広げる。2つ目、直す前に写真を撮る。DIYでも業者でも、施工前と施工後の写真は、保険にも退去精算にも効く証拠です。
3つ目、突発的な破損は、直す前に保険会社に連絡する。台風、大雪、落雷、凍結による割れは、火災保険の対象になることが多い。写真を撮り、保険会社か代理店に事故の受付をしてもらい、業者に見積もりを頼む。この順番なら、DIYで応急処置をしても、保険の申請ができます。
冒頭の大家さんは、60万円の後、空室のクロスは自分で張り、屋根は業者に頼み、次の大雪で雨樋が壊れたときは写真を撮って保険会社に連絡してから見積もりを取りました。保険で8割が戻り、「線引きを守れば、DIYは堂々とやれる」と話していました。
今日やることは、自分がこれまでDIYで直した場所を書き出して、この記事の表と照らすことです。電気・ガス・水道の直結部分に触れていたら、業者に点検を頼んでください。線引きを知った大家は、安全に、堂々と修繕費を抑えられます。
- ✅ これまでDIYで直した場所を書き出し、電気・ガス・水道の直結部分に触れていないか確認した
- ✅ 電気・ガス・給排水の直結・屋根・外壁・ボイラーは業者に任せると決めた
- ✅ クロス・パッキン・照明・小物など資格不要の範囲だけDIYすることにした
- ✅ DIYは空室でだけ試し、入居中の部屋ではやらない
- ✅ 直す前に施工前の写真を撮る習慣にした
- ✅ 台風・大雪・凍結の破損は、直す前に保険会社へ連絡してから見積もりを取る
📌 この記事のまとめ
- DIYが退去につながるのは、仕上がりの再発・生活への影響・証拠がなく保険が使えない、の3つ。「安く済ませた」が本当に安いかは、退去と保険まで含めて決まります。
- 電気・ガス・給排水の直結は資格が必要で、無資格工事は保険が免責になり数百万円の賠償になります。屋根・外壁・ボイラーも業者に。クロス・パッキン・照明は自分で。
- DIYは空室でだけ、直す前に写真、突発の破損は保険会社に連絡してから。まずはこれまでDIYした場所を書き出して、線引きの表と照らしてください。
その見積もり、頼む前に見せてください
元設備設計士の筆者が、修繕の見積書を「一式」の中身まで読んで、高いか安いか・何を確認すべきかをお伝えします。まずはお問い合わせフォームから見積書の内容をお送りください。


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