📖 「まだ大丈夫」を3年続けた
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札幌で築28年のアパートを持つ若い大家さんは、屋根の板金の浮きに気づいてから3年間、「まだ雨漏りしていないし」と先送りを続けました。3年目の春、融雪水が室内に侵入し、入居者の家財が水浸しに。約80万円の損害賠償と、屋根のやり直し工事を二重に背負うことになりました。「あのとき5万円で直していれば」というのが本人の言葉です。
修繕を後回しにした末に、入居者から損害賠償を請求される。そんな結末が実際に起きています。怖いのは、「業者が悪かった」「天候が悪かった」では済まないことです。建物の欠陥で損害が出れば、所有者は過失がなくても責任を負う。本記事では、元設備設計士で、札幌で築古物件を自主管理する筆者が、放置が「義務違反」に変わる境目、損害賠償になった典型的な流れ、そして放置を防ぐ点検と記録の習慣を整理します。法律の解釈は一般的な考え方として書くので、個別の判断は専門家に確認してください。
読み終える頃には、「まだ大丈夫」という言葉を口にしなくなり、気づいた日に動ける大家になります。
📖 この記事でわかること
修繕の放置が「知っていて直さなかった」時点で義務違反に変わる境目と、工作物責任で大家が過失なしでも賠償を負う理由がわかります。屋根の浮きから賠償80万円に至る典型的な流れ、気づいた日の記録・30日以内の業者依頼・雪解け後の点検という3つの習慣を表とチェックリストで確認できます。
⚖️ 考え方: 放置が「義務違反」に変わる境目
大家には、入居者が普通に住める状態を保つ修繕義務があります。ここで大事なのは、「壊れたら直す」ではなく「知ったら動く」が義務の中身だということです。屋根の浮きを見つけた日、入居者から「天井にシミがある」と連絡を受けた日。その日から、放置は「知っていて直さなかった」状態に変わります。
冒頭の大家さんが3年間「まだ大丈夫」と言えたのは、雨漏りが起きていなかったからです。しかし法的には、危険を認識した時点で対応する義務が始まっています。3年後に被害が出たとき、「気づいていなかった」とは言えません。自分で写真を撮っていたからです。
さらに重いのが、民法の工作物責任です。建物の設置や保存に欠陥があって他人に損害が出た場合、所有者は過失がなくても賠償責任を負います。つまり「業者が悪かった」「天候が異常だった」と言っても、入居者への賠償は大家に来ます。業者に請求し直すのはその後の話で、まず払うのは大家です。
設備設計の目で言えば、建物の不具合は「気づきやすい順」に出てきます。屋根の板金の浮き、外壁のひび、シーリングの切れ、天井のシミ、給湯器の異音。どれも初期は数万円で直り、放置すると数十万円から百万円になります。そして放置の途中で入居者に被害が出ると、修繕費に賠償が上乗せされます。
境目はシンプルです。「知った日」から30日以内に業者に見せたか。この1点で、放置か対応中かが分かれます。直せなくても、見積もりを依頼した記録があれば「対応中」です。義務は「直すこと」より「動くこと」にあります。
💡 ポイント
義務は「壊れたら直す」ではなく「知ったら動く」。知った日から30日以内に業者に見せた記録があれば対応中、なければ放置。工作物責任で賠償は過失なしでも大家に来ます。
💧 やり方: 損害賠償になった典型的な流れと、分かれ道
損害賠償に至る流れは、驚くほど似ています。1年目、屋根の板金の浮きや外壁のひびに気づくが、被害がないので先送り。2年目、天井に薄いシミが出るが「乾いたから大丈夫」と拭いて終わり。3年目、大雪の後の雪解けで融雪水が一気に侵入し、入居者の家財が水浸し。ここで初めて業者を呼び、慌てて安い業者に頼んで施工不良が重なる。
冒頭の大家さんの場合、3年目に相場より100万円安い業者に620万円の工事を発注し、契約を2本に分けられ、その業者は建設業許可を持っていませんでした。施工不良で被害が再発し、賠償80万円とやり直し工事の二重負担に。慌てて選んだ業者が、傷を深くした典型です。
賠償の内訳も知っておいてください。階下や室内に被害が出ると、対象は内装だけではありません。家具・家電などの家財、場合によっては仮住まいの費用や、店舗なら営業損失まで広がります。放置した時間の長さが、そのまま賠償額に変わります。
分かれ道は2つあります。1つ目は「知った日」。ここで写真を撮り、業者に見せれば、5万円の板金補修で終わります。2つ目は「シミが出た日」。ここで屋根裏を点検すれば、10〜20万円の部分補修で済みます。3つ目の「水浸しの日」まで来ると、選択肢はもうありません。
火災保険も味方になります。風や雪による突発的な破損は補償の対象になることが多く、大家が被害を受けた場合の家財も施設賠償責任保険でカバーできることがあります。ただし、経年劣化を放置した結果の被害は対象外になりやすい。保険は「動いていた大家」を守り、「放置していた大家」を守りません。
| 段階 | 起きること | この時点で動けば |
|---|---|---|
| 1年目:気づく | 板金の浮き、外壁のひび、被害なし | 板金補修5万円で終わる |
| 2年目:兆候 | 天井に薄いシミ。拭いて終わり | 屋根裏点検と部分補修10〜20万円 |
| 3年目:被害 | 融雪水が侵入、家財が水浸し | 賠償80万円+工事。選択肢なし |
| その後:二次被害 | 慌てて安い業者、施工不良で再発 | やり直し工事で二重負担 |
📝 マインド: 放置を防ぐ「点検と記録」の3つの習慣
放置を防ぐのに、意志の強さは要りません。習慣を3つ作るだけです。1つ目は、気づいた日に記録する。不具合ノート(紙でも表計算でも)に日付・場所・状態・写真を残す。2つ目は、30日以内に業者に見せる。直さなくてもいい、見積もりを依頼した記録を1行残す。3つ目は、雪解け後の4〜5月に年1回の点検をする。屋根、外壁、シーリング、雨樋、給湯器の5か所を見る。
記録があると、放置が「対応中」に変わります。入居者から連絡を受けた日、業者に見積もりを頼んだ日、工事を決めた日。この3つの日付が残っていれば、対応が遅れた理由(業者の繁忙期、部材の納期)も含めて説明できます。逆に何も残っていなければ、どれだけ誠実に考えていても「放置」と見られます。
筆者が札幌で管理する物件でも、雪解け後の点検で板金の浮きを見つけ、その週に業者を呼んで5万円で直したことがあります。それで終わりです。同じ不具合を3年放置すれば、冒頭の話になります。差は、技術でも資金でもなく、「見つけた週に動いたか」だけです。
冒頭の大家さんは、80万円の後、不具合ノートを作り、気づいた日に写真を貼り、30日以内に業者に見せるルールにしました。翌年からは雪解け後の点検で板金の浮きを早期に見つけ、5万円で補修。「まだ大丈夫、という言葉を使わなくなった」と話していました。
今日やることは、自分の物件で「気づいているけれど直していないもの」を紙に書き出すことです。1つでもあれば、それが境目の手前にいる不具合です。写真を撮って、今週中に業者に見せてください。それだけで、放置は対応中に変わります。
- ✅ 「気づいているけれど直していない不具合」を紙に書き出した
- ✅ 不具合ノートを作り、日付・場所・状態・写真を残すことにした
- ✅ 知った日から30日以内に業者へ見積もりを依頼し、その記録を残した
- ✅ 入居者からの連絡日・業者への依頼日・工事決定日の3つの日付を残している
- ✅ 雪解け後の4〜5月に屋根・外壁・シーリング・雨樋・給湯器の点検を予定した
- ✅ 火災保険と施設賠償責任保険の補償範囲を確認した
📌 この記事のまとめ
- 大家の修繕義務は「壊れたら直す」ではなく「知ったら動く」。知った日から30日以内に業者に見せた記録がなければ放置となり、工作物責任で賠償は過失なしでも大家に来ます。
- 損害賠償への流れは、気づく・兆候・被害・二次被害の4段階。1年目に5万円で終わる補修が、3年目には80万円の賠償とやり直し工事になります。
- 気づいた日に記録、30日以内に業者、雪解け後に年1回点検。まずは「気づいているけれど直していないもの」を紙に書き出し、今週中に業者に見せてください。
その見積もり、頼む前に見せてください
元設備設計士の筆者が、修繕の見積書を「一式」の中身まで読んで、高いか安いか・何を確認すべきかをお伝えします。まずはお問い合わせフォームから見積書の内容をお送りください。


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