📖 その工事、半額戻ったのに
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築35年のアパートで6戸の窓を内窓にして240万円。全額自腹で払い終えた翌月、若い大家さんは知人の大家に言われました。「その工事、補助金で半分以上戻るやつだったのに」。調べると、着工前に申請していれば144万円が戻る制度でした。契約済みの工事は対象外。知らなかっただけで、144万円を逃したのです。
「あの修繕、もっと早く知っていれば」と後で気づく大家さんは後を絶ちません。国や自治体には大家が使える支援制度が数多くあり、省エネ改修・バリアフリー化・耐震補強では1戸あたり100万円を超える補助が出る制度もあります。本記事では、元設備設計士で、札幌で築古物件を自主管理する筆者が、国の制度の3つの柱、北海道と札幌市の独自支援と窓口、申請の流れと採択率を上げる準備、対象になる工事の線引きを整理します。制度名や上限額は年度で変わるので、必ず最新の公募要領で確認してください。
読み終える頃には、次の修繕の3か月前から動いて、制度を使いこなす大家になっています。
📖 この記事でわかること
国の補助制度が省エネ・バリアフリー・耐震の3本柱に分かれ、内窓の交換で工事費の6割が戻った実例がわかります。北海道・札幌市の独自支援と併用、着工前申請と公募開始1か月以内という採択のコツ、対象になる工事の線引きを表とチェックリストで確認できます。
🏛️ 考え方: 国の制度は3つの柱。「性能が上がる工事」に「着工前」に出る
大家が使える国の支援は意外と多く、大きく3つの柱に分かれます。省エネ系は、窓・断熱の改修で1戸あたり最大200万円規模の制度(先進的窓リノベ事業など)。バリアフリー系は、手すりの設置や段差の解消で最大100〜250万円規模(長期優良住宅化リフォーム推進事業など)。耐震系は、旧耐震(1981年5月以前)物件の補強工事で最大100万円程度。名称も上限も年度で変わるので、ここでは柱として覚えてください。
特に効果が大きいのが窓の改修です。既存の窓の内側に内窓を追加する省エネ改修は、入居者の暖房費が年間2〜3万円下がり、空室対策にも直結します。冒頭の例では、工事費240万円のうち144万円が制度で戻り、実質負担96万円、6割引きで省エネ改修ができた計算です。
ただし、原則は「工事契約前」の申請です。発注後や着工後では対象外になります。冒頭の大家さんが逃したのは、まさにこの1点でした。次に大きな修繕が必要になる時期が分かっているなら、その3か月前から動けば十分に間に合います。
北海道・札幌市には、国の制度に上乗せして使える独自の支援があります。過去には、札幌市の住宅エコリフォームの補助(断熱改修で最大50万円規模)、北海道の安心ストック住宅の推進事業(旧耐震物件の改修支援)、民間賃貸のバリアフリー化改修(1戸あたり数十万円)といった制度がありました。申請窓口は札幌市の住宅担当課や北海道の建設部の住宅担当課で、事前に窓口で「対象工事の確認」を受けると、不採択のリスクが大きく減ります。
国と自治体の制度は併用できるケースが多く、窓リノベと札幌市の断熱改修支援を組み合わせて、還付率が合計7割を超えた例もあります。知っているか知らないかだけで、数十万円から百万円単位の差がつきます。これらの制度は年度ごとに内容が更新されるので、申請前に必ず最新の公募要領を公式サイトで確認してください。
| 柱 | 対象になる工事の例 | 補助の目安(年度で変わる) |
|---|---|---|
| 省エネ | 内窓・高断熱窓、断熱材の追加、高効率給湯器 | 1戸あたり最大200万円規模 |
| バリアフリー | 手すりの設置、段差の解消 | 最大100〜250万円規模 |
| 耐震 | 旧耐震(1981年5月以前)物件の補強 | 最大100万円程度 |
| 自治体の上乗せ | 札幌市の断熱改修支援など | 数十万円。国と併用できることが多い |
📝 やり方: 申請の5ステップと、採択率を上げる2つの準備
申請の基本ステップは5つです。公募要領を確認する(年度ごとに変わる)。見積もりを3社から取得し、対象工事を整理する。申請書類を提出する(着工前が原則)。交付決定後に契約・着工する。完了報告書を提出して入金(着工から3〜6か月後)。
採択率を上げるポイントは2つあります。1つ目は「対象工事の根拠資料を揃える」こと。製品のカタログ、性能の証明書、施工前の写真、見積書の内訳です。2つ目は「公募開始から1か月以内に申請を完了する」こと。多くの制度は予算の上限に達した時点で受付が終わる、早い者勝ちです。
公募初日に申請した大家さんは無事に採択され、2か月後に申請した大家さんは予算切れで不採択だった、という例は珍しくありません。重要なのは「公募開始日をカレンダーに登録する」という地味な準備です。
入金は工事完了から数か月後なので、工事費はいったん全額を立て替える必要があります。資金繰りは、補助金が入る前提で組まずに、入ったら修繕積立に戻す、という順番で考えてください。交付決定の前に着工してしまうと対象外になる点も、業者に事前に伝えておきます。
設備設計の仕事で行政の補助制度を扱うときも、やることは同じです。要領を読む、根拠資料を揃える、期限の前に出す。特別な技術ではなく、段取りの問題です。
- ✅ 次の大きな修繕の時期を確認し、3か月前から動くと決めた
- ✅ 国の3つの柱(省エネ・バリアフリー・耐震)のどれに当たる工事か整理した
- ✅ 札幌市・北海道の独自支援と併用できるか、窓口で対象工事の確認を受けた
- ✅ 公募開始日をカレンダーに登録し、3社の見積もりと根拠資料を揃えた
- ✅ 着工前に申請し、交付決定後に契約・着工する順番を業者に伝えた
- ✅ 立て替えの資金を用意し、入金後に修繕積立へ戻す計画を立てた
🔍 マインド: 対象になる工事と、ならない工事の線引き
対象になりやすいのは「性能向上を伴う工事」です。逆に、原状回復が目的の工事はほぼ対象外と覚えてください。対象の例は、高断熱窓への交換、断熱材の追加、耐震補強、バリアフリーの手すり設置、高効率給湯器の導入。対象外の例は、原状回復目的のクロス張替え、設備の単なる老朽交換、外観の美観だけの改修です。
判断の要は「省エネ・耐震・バリアフリーの性能基準を証明できるか」です。たとえば窓の改修なら、熱の通しやすさを示す数値(熱貫流率)の基準があり、古い窓ガラスを同等品に交換しただけでは対象になりません。基準を満たす製品を選び、その証明を申請書に添えます。
ここで元設備設計士としてひとつ。給湯器の交換は、寒冷地では避けられない出費です。同じ交換でも、高効率タイプを選べば補助の対象になる可能性があり、ランニングコストも下がります。「壊れたから同じものに替える」ではなく「壊れる前に、性能が上がるものに替える」と考えると、補助金と修繕計画が噛み合います。
冒頭の大家さんは、144万円を逃した後、2棟目の給湯器と断熱改修では公募の3か月前から準備し、交付決定を受けてから着工しました。実質負担は4割。「1棟目の144万円は高い授業料だったが、2棟目で取り返した」と話していました。
制度は毎年変わり、予算は早い者勝ちです。今日やることは、自分の物件で次に必要な修繕を書き出し、それが3つの柱のどれに当たるかを確認して、公募の情報を探すこと。知らないだけで逃していたお金が、次の修繕から戻ってきます。
💡 ポイント
対象は「性能が上がる工事」、原則は「着工前の申請」。給湯器も窓も、壊れる前に性能が上がるものへ替えると、補助金と修繕計画が噛み合います。
📌 この記事のまとめ
- 国の補助制度は省エネ・バリアフリー・耐震の3本柱。内窓の改修で工事費の6割が戻った例があり、北海道・札幌市の独自支援と併用できることも多いです。
- 原則は着工前の申請で、公募開始から1か月以内が採択の分かれ目。公募開始日をカレンダーに登録し、3社見積もりと根拠資料を揃えて、交付決定後に着工します。
- 対象は性能向上を伴う工事で、原状回復は対象外。制度は年度で変わるので最新の公募要領を確認し、次の修繕の3か月前から動いてください。


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