📖 「表面利回り10%」の正体
— 記事本文へ続く —
物件広告の「表面利回り12%」。若い大家さんはその数字に目を奪われ、購入を決めかけていました。念のため、固定資産税、保険料、除雪費、修繕の積立、空室の損失、購入時の諸費用を全部入れて計算し直すと、毎月の手残りはマイナス。「12%」は経費も空室も諸費用も入っていない、夢の数字だったのです。
表面利回りだけを見て物件を買い、後悔する大家さんが後を絶ちません。札幌の築古物件は雪国特有の経費もかかるので、慎重な数字の検証が欠かせません。本記事では、元設備設計士で、札幌で築古物件を自主管理する筆者が、表面利回りと実質利回りの違いと計算式、札幌で見落としやすい経費、築年数別の実質利回りの目安、楽観・標準・悲観の3シナリオ、そして利回り以外の4つの指標を整理します。
読み終える頃には、広告の数字を「入口の目安」として受け止め、自分の手で実質利回りと悲観シナリオを出してから判断できるようになります。
📖 この記事でわかること
表面利回りと実質利回りの計算式と、同じ物件で数ポイント違う理由がわかります。札幌の築古で見落としやすい除雪費・凍結修理・修繕積立、築年数別の実質利回りの目安、購入諸費用の割合、楽観・標準・悲観の3シナリオ、利回り以外の4つの指標を、表とチェックリストで確認できます。
📊 考え方: 表面利回りは「夢の数字」。実質利回りで見る
物件広告に出ている「利回り〇%」のほとんどは表面利回りです。計算式は「年間家賃 ÷ 物件価格 × 100」で、経費も空室も無視した数字です。たとえば1,500万円の物件で家賃が月6万円×4戸なら、年間家賃は288万円。288万円 ÷ 1,500万円 × 100 = 表面利回り19.2%。これは現実とはかけ離れています。
実質利回りは、現実の手取りに近い指標です。分子は「年間家賃収入 − 年間経費」、分母は「物件価格 + 購入諸費用」、最後に100を掛けます。同じ物件で年間経費80万円、諸費用150万円とすると、(288万 − 80万) ÷ (1,500万 + 150万) = 約12.6%。表面利回りとの差は6.6ポイントです。
よくあるミスは、経費の計上漏れです。特に見落としがちなのは、空室率(札幌市は10〜15%を想定)、修繕費(年間家賃の5〜10%を積立)、管理費(家賃の5%前後)の3つ。さらに札幌の築古では、除雪費や融雪費(年5〜15万円)、凍結による配管修理、雪災に備えた保険の特約など、本州にはない経費が発生します。
経費の項目を挙げると、固定資産税と都市計画税(家賃収入の5〜10%)、建物の保険料(年2〜5万円)、管理委託料(家賃の5%前後)、共用部の電気代と水道代(年3〜8万円)、除雪費と融雪費(年5〜15万円)、修繕積立(家賃収入の5〜10%)、空室損失(家賃収入の10〜15%)、入退去時のクロスと清掃費(1室5〜15万円)。家賃288万円の物件なら、経費は年間70〜90万円が目安です。
冒頭の大家さんの物件は、広告の表面利回り12%に対し、経費と諸費用を入れた実質は5%を切り、ローンの返済を引くと毎月マイナスでした。「12%なら買い」と即決していたら、購入後に毎月赤字を抱えていたことになります。広告の数字は入口の目安。判断は必ず実質利回りで行ってください。
💡 ポイント
表面利回りは経費も空室も諸費用も入っていません。年間経費と購入諸費用を入れた実質利回りで、しかも札幌なら除雪費と凍結修理まで織り込んで判断しましょう。
🧮 やり方: 築年数別の目安と、3シナリオの試算
「実質利回り何%あれば買っていいのか」とよく相談を受けます。札幌市内の目安は、新築アパートで4〜6%(長期保有向け)、築20年前後で7〜9%(主流のゾーン)、築30年以上で10%以上(修繕計画とセットで判断)です。築古で10%を切るなら、修繕の見込みを入れ直して再計算した方がよい、という目安です。
札幌の大家さんから「表面利回り14%の築40年アパートを買ったが、実質で計算したら5%だった」という相談がありました。理由は、購入諸費用が150万円、給排水管の交換が3年以内に必須で200万円、屋根の塗装も近々必要、というおまけが付いていたからです。購入前に修繕履歴と将来の修繕計画を必ず確認し、家賃も近隣の同条件の物件と比べて相場より高く設定されていないかを見てください。
購入諸費用は物件価格の7〜10%が目安で、仲介手数料、登録免許税、不動産取得税、火災保険などが含まれます。収益の試算では、この諸費用を必ず分母に入れます。分母に入れ忘れると、それだけで実質利回りが1ポイント近く高く見えます。
試算は1つの数字で判断せず、必ず3パターンで行います。楽観は空室率0%・金利据え置きで最大利益を確認する。標準は空室率10〜15%・現状の金利で、中心となる判断材料にする。悲観は空室率20%・金利1〜2%上昇で、返済が破綻しないかを確認する。たとえば1,500万円を金利2%・25年で借りると月の返済は約6.4万円。金利が3%に上がると約7.1万円で、年間9万円ほど支出が増えます。
筆者の札幌の物件でも、空室が2戸出た月にキャッシュフローがマイナスになる試算でした。事前に最悪のシナリオを把握し、修繕費を多めに積み立てていたので乗り切れました。悲観シナリオでも返済が破綻しないかを必ず確認する。楽観値だけで買うのは、天気予報を見ずに出航するようなものです。
| シナリオ | 空室率・金利 | 何を確認するか |
|---|---|---|
| 楽観 | 空室0%・金利据え置き | 最大でどれだけ残るか |
| 標準 | 空室10〜15%・現状の金利 | 判断の中心。手残りが出るか |
| 悲観 | 空室20%・金利+1〜2% | 返済が破綻しないか |
📈 マインド: 利回り以外の4つの指標で、物件を立体的に見る
収益の試算を利回りだけで判断するのは危険です。併用したい指標は4つ。自己資金回収率(年間のキャッシュフロー ÷ 自己資金 × 100、目安10%以上)。債務返済余裕率(年間の純収益 ÷ 年間の返済額、1.3以上が安全圏)。投資収益率(年間の利益 ÷ 投資総額 × 100、8%以上が望ましい)。元本回収期間(自己資金 ÷ 年間のキャッシュフロー、10年以内)。
特に重要なのが債務返済余裕率です。年間の純収益200万円、年間の返済額150万円なら約1.33。これが1.0を切ると、返済が苦しくなる危険信号です。自己資金回収率は、自己資金300万円で年間のキャッシュフロー30万円なら10%。少ない自己資金でどれだけ稼げるかを示す指標で、借入の効き方の判定に使います。
冒頭の大家さんは、その物件を見送りました。実質利回りが5%を切り、悲観シナリオで返済が回らなかったからです。その後、実質8%で悲観でも回る別の物件を見つけて購入し、いまは安定して手残りが出ています。「あの12%に飛びついていたら、いま頃は毎月の持ち出しに追われていた」というのが本人の言葉です。
数字に強い大家になるには、複数の指標で物件を立体的に見る癖が要ります。利回りは入口、実質利回りで判断、3シナリオで耐性を確認、4つの指標で借入とのバランスを見る。この順番で見れば、広告の数字に振り回されることはありません。
表面利回りはあくまで入口の数字です。札幌の築古物件は、除雪費や凍結対策など雪国特有の経費を必ず織り込んでください。楽観・標準・悲観の3シナリオで試算し、悲観でも破綻しないかを、今日から表計算で確認していきましょう。気になる物件があるなら、まず経費の8項目を書き出すところからです。
- ✅ 広告の表面利回りではなく、経費と諸費用を入れた実質利回りを自分で計算した
- ✅ 札幌特有の除雪費・凍結修理・雪災の保険を経費に入れた
- ✅ 購入諸費用(価格の7〜10%)を分母に入れた
- ✅ 修繕履歴と3年以内の修繕計画を確認し、費用を見込んだ
- ✅ 楽観・標準・悲観の3シナリオで、悲観でも返済が回るか確認した
- ✅ 債務返済余裕率1.3以上など、利回り以外の指標でも確認した
📌 この記事のまとめ
- 広告の表面利回りは経費も空室も諸費用も入っていない「夢の数字」です。判断は年間経費と購入諸費用を入れた実質利回りで行いましょう。
- 札幌の築古は除雪費・凍結修理・雪災の保険など雪国特有の経費を織り込み、楽観・標準・悲観の3シナリオで試算する。悲観でも返済が回らない物件は見送りです。
- 利回りに加えて、債務返済余裕率1.3以上など4つの指標で物件を立体的に見る。気になる物件があるなら、まず経費の8項目を書き出すところから始めてください。
札幌・北海道の築古物件のご相談
筆者が所属する Vevelib で、物件の売却・購入・修繕のご相談を受けています。「この物件、直して貸すべきか売るべきか」といった段階のご相談でも大丈夫です。


コメント