📖 「まあいいか」が半年後に強制退去
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入金日の翌日、通帳は空欄。「初月だし催促しづらい。来月まとめて入るだろう」。若い大家さんはそう思って、何もしませんでした。翌月も、その翌月も「来月払います」と言われ続け、半年後には未払いが60万円を超え、連絡もつかなくなり、最終的に強制執行まで進みました。回収できたのは、ごく一部です。
家賃滞納で大切なのは、最初の動き出しです。本記事では、元設備設計士で、札幌で築古物件を自主管理する筆者が、滞納発生から強制退去までの全体像と、最初の72時間でやること、内容証明の書き方、保証会社への報告の期限、支払督促と明渡訴訟の違い、強制退去にかかる費用と北海道特有の事情を整理します。法的な手続きは一般的な流れとして説明するので、実際に進めるときは弁護士に相談してください。
読み終える頃には、滞納が起きた日に迷わず動ける手順が手に入り、「まあいいか」の半年後に来る損失を避けられます。
📖 この記事でわかること
家賃滞納で最初の72時間にやる4つの行動と、口頭の約束を文書にする理由がわかります。内容証明に書く5項目と費用、保証会社への報告の期限と代位弁済の流れ、支払督促と建物明渡訴訟の違いと費用の目安、強制退去までの費用と北海道の厳冬期の事情を、表とチェックリストで確認できます。
⏰ 考え方: 最初の72時間で、その後の損失が決まる
家賃滞納で最もやってはいけないのが、「とりあえず1か月待つ」という対応です。入金期日を1日でも過ぎたら、その日のうちに動くのが鉄則です。「初月だし催促しづらい」「来月まとめて入るだろう」と放置すると、入居者は「払わなくても何も言われない」と学習し、次月以降の滞納の確率が一気に上がります。
最初の72時間でやることは4つ。入金期日の翌日に電話・メール・SMSで連絡する(「うっかり忘れ」を否定せず軽く確認)。3日以内に自宅訪問かポスト投函で書面通知する(連絡が取れなければ在宅確認も兼ねる)。1週間以内に保証会社へ滞納発生の一次報告をする(遅れると保証範囲外のリスク)。並行して、連絡履歴を日付・時間入りで保存し、契約書の滞納時の特約と解除条件、連帯保証人の連絡先を確認する。
札幌のある大家さんは、3月分の滞納を「来月払います」と言われ続け、5月末に夜逃げされました。このケースで決定的だったのは、最初の電話で「いつ・いくらを・どう払うか」を文書で約束させなかったことです。口頭の約束は法的に弱く、後から「言った言わない」になります。最初の72時間で文書化を徹底することが、滞納対応の最大の分かれ目です。
冒頭の大家さんも、最初の1か月を「まあいいか」で過ごしたことが、半年後の強制執行につながりました。滞納は放置した期間に比例して回収が難しくなり、費用と時間が膨らみます。逆に、初動が早い大家の滞納は、たいてい1〜2か月で解決します。
催促は入居者を責める行為ではありません。「入金の確認が取れていないので、状況を教えてください」と淡々と伝え、返答を文書で残す。この姿勢が、入居者との関係を壊さずに滞納を止めます。
💡 ポイント
滞納は入金期日の翌日に連絡し、3日以内に書面、1週間以内に保証会社へ報告。支払いの約束は「いつ・いくら・どう」を文書で残しましょう。
✉️ やり方: 内容証明、保証会社への請求、法的手続きの流れ
滞納が2か月続いたら、内容証明郵便を送る段階です。内容証明は、郵便局が「いつ・どんな内容を送ったか」を証明する文書で、後の手続きで重要な証拠になります。書くのは5項目。滞納金額と対象月(「〇月分・〇月分 計〇万円」と明細)。支払期限(到達後7〜14日以内が一般的)。期限内に支払いがない場合は契約を解除する旨。差出人と受取人の住所・氏名。連帯保証人がいる場合は同じ文面を保証人にも送る。費用は1通1,500円前後で、電子の内容証明なら自宅から24時間送れます。
札幌市内の大家さんが滞納2か月目で内容証明を送ったところ、3日後に未払い分が一括で入金された例があります。「裁判の前段階に来ている」という心理的な効果が働いた典型です。注意したいのは、感情的な文章を書かないこと。事実と請求だけを淡々と書くのが、有効な内容証明です。
保証会社に入っている物件なら、負担は大きく減ります。ただし、請求の時期と書類を間違えると立替(代位弁済)を断られることがあります。目安は、滞納から3日以内に一次報告、滞納1か月時点で正式な請求書(滞納の明細・督促の履歴・契約書の写し)を提出、請求後2週間〜1か月で立替金が入金、その後の回収は保証会社が行う。契約によっては一定期間内に報告しないと保証範囲外になるので、「2か月待ってから報告」は危険です。筆者の物件でも入居者が体調を崩して2か月分滞納したことがありますが、翌日に保証会社へ連絡したことで満額カバーされました。
保証会社に入っていない、または立替が下りない場合は、自分で法的手続きに進む必要があります。主な手段は「支払督促」と「建物明渡訴訟」の2つ。支払督促は滞納家賃の回収が目的で、簡易裁判所の書記官に申し立て、手数料は請求額10万円で5,000円前後、期間は1〜2か月。ただし相手が異議を出すと通常の訴訟に移ります。建物明渡訴訟は家賃の回収と部屋の明渡しが目的で、印紙代1〜2万円と郵券、弁護士に依頼すると着手金20〜30万円と成功報酬、期間は3〜6か月が目安です。
滞納4か月の入居者に支払督促を送ったところ、異議が出て訴訟に発展し、解決まで8か月かかった例もあります。滞納が3か月を超えた段階で、早めに弁護士に相談しておくのが現実的です。ここに書いた費用や期間は一般的な目安で、事案によって変わります。
| 段階 | やること | 費用・期間の目安 |
|---|---|---|
| 翌日〜1週間 | 連絡・書面通知・保証会社へ一次報告 | 0円 |
| 滞納2か月 | 内容証明郵便(5項目を淡々と) | 1通1,500円前後 |
| 滞納3か月超 | 弁護士に相談 | 相談料は事務所による |
| 支払督促 | 家賃の回収。簡易裁判所へ申立て | 5,000円前後・1〜2か月 |
| 建物明渡訴訟 | 回収+明渡し | 印紙1〜2万円+弁護士費用・3〜6か月 |
🚪 マインド: 強制退去の現実と、手前で手仕舞う判断
訴訟で判決が出ても、入居者が自主的に退去しなければ強制執行が必要になります。ここまで来ると費用も時間もかかるため、できる限り手前で和解と退去を引き出すのが大家の鉄則です。費用の内訳は、明渡判決の取得(訴訟費用と弁護士費用)、執行文の付与と送達(数千円)、強制執行の予納金(6〜10万円)、執行官の手数料(数万円)、運送会社と鍵業者(10〜30万円)、荷物の運び出しと保管(30〜80万円、廃棄費用も大家負担)。いずれも大家が立て替え、入居者へ請求はできますが回収は困難なことが多いです。
北海道特有の事情もあります。厳冬期(特に1〜2月)の強制執行は、人道的な配慮で延期される場合があります。雪の問題も考えると、執行日は春以降を狙うのが現実的です。執行当日は、執行官・運送業者・鍵業者・大家(か代理人)が現場に集まり、解錠して占有を確認し、家財を運び出して一定期間保管、引き取りがなければ廃棄、という流れです。
筆者が札幌で管理するアパートでも、ここまで進む前に「退去すれば残りの債務は請求しない」という和解で収めたケースがほとんどです。家賃滞納は、戦うより早く手仕舞う方が結果的に得をします。強制執行の費用を考えれば、数か月分の家賃を諦めて退去してもらう方が、損失は小さいのです。
冒頭の大家さんは、次の滞納では翌日に連絡し、支払いの約束を文書で残し、2か月目に内容証明を送りました。3日後に一括入金があり、訴訟には至りませんでした。「最初の1か月を放置した半年間と、翌日に動いた2か月。同じ滞納でここまで違うのか」というのが本人の感想です。
家賃滞納は、最初の72時間の初動で、その後の損失額が大きく変わります。2か月で内容証明、3か月超で弁護士相談、保証会社へは即日〜3日以内に報告。強制退去まで進むと数十万円かかるので、手前の和解が現実解です。まずは、いまの契約書の滞納時の条項と、保証会社の報告期限を確認しておいてください。
- ✅ 入金期日の翌日に連絡し、支払いの約束を「いつ・いくら・どう」で文書に残した
- ✅ 3日以内に書面で通知し、1週間以内に保証会社へ一次報告した
- ✅ 連絡履歴を日時つきで保存した
- ✅ 滞納2か月で内容証明(事実と請求だけ)を送った
- ✅ 滞納3か月を超えたら弁護士に相談した
- ✅ 強制執行の費用を踏まえ、手前での和解・退去を優先した
📌 この記事のまとめ
- 家賃滞納は最初の72時間で決まります。翌日に連絡、3日で書面、1週間で保証会社へ報告。支払いの約束は必ず文書で残しましょう。
- 2か月で内容証明、3か月超で弁護士相談が目安。支払督促は安く早いが異議で訴訟に移り、明渡訴訟は3〜6か月かかります(費用と期間は一般的な目安です)。
- 強制退去まで進むと荷物の搬出・保管だけで数十万円。戦うより早く手仕舞う方が得です。まずは契約書の滞納時の条項と、保証会社の報告期限を確認してください。


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