📖 「知らなかった」で始まった大家1年目
— 記事本文へ続く —
「家賃収入があれば老後は安泰」。そう思って始めた賃貸経営で、初年度から赤字を抱える大家さんが後を絶ちません。原因のほとんどは、最初に知っておけば防げたはずの「知らなかった」ことです。筆者自身、はじめて物件を買ったときは何を準備すればいいか分からず、不動産会社の説明をただ受け入れていました。
本記事では、元設備設計士で、札幌で築古物件を自主管理する筆者が、はじめての賃貸経営で必ず知っておきたい7つの話を整理します。①賃貸経営の仕組み、②収益モデルと利回りの目安、③大家に必要な4つの法律、④契約で揉めないための書面化、⑤立地、⑥構造と築年数、⑦修繕履歴。この順に読めば、後悔のスタートは避けられます。
読み終える頃には、「利回りの数字」ではなく「手元に残るお金」で物件を見られるようになり、次の内見に持っていくチェックリストが手に入ります。
📖 この記事でわかること
賃貸経営の収益の仕組みと、築古物件の利回りの目安・年間の修繕予算の考え方がわかります。大家が押さえる4つの法律と、契約段階で書面にしておく負担区分、立地・構造と築年数・修繕履歴の3つで物件を見る方法を、表とチェックリストで確認できます。
🏠 考え方: 賃貸経営の仕組みと、利回りの数字が隠すもの(話①②)
賃貸経営とは、所有する物件を入居者に貸して家賃収入を得る事業です。収益は大きく2つに分かれます。毎月の家賃から経費を引いた継続的な利益(インカムゲイン)と、物件を売却したときの差益(キャピタルゲイン)です。個人の大家の多くは、前者を中心に運営します。
家賃から差し引く主な経費は、固定資産税、修繕費、管理費、火災保険料です。年間家賃収入の2〜3割が一般的な目安で、築古物件ではここに突発的な修繕費が乗ります。給湯器の交換、給排水管の漏水、屋根の板金。どれも1件で数十万円になり、年間50〜80万円程度の修繕予算を最初から見ておく必要があります。
築古アパートの表面利回りは、首都圏で6〜10%、地方都市で10〜15%が標準的な線です。月額家賃合計60万円、購入価格5,000万円なら表面利回りは約14%です。ただし、この数字は経費も空室も含んでいません。表面利回りだけで判断すると、初年度に手元資金が尽きるパターンに陥ります。
筆者が新米大家さんの相談で最初に聞くのは、「家賃の何割を修繕と税金に取られる前提で計算しましたか」という一点です。ここが抜けている人は、利回り12%の物件が、実際には手取りで5%を切っていたと後から知ることになります。
「これで老後も安心」と家族に伝えた手前、初年度の赤字はなかなか言い出せない。利回りの数字だけを信じた人が陥る、いちばん切ないパターンです。数字は、経費と修繕を引いてから見る。これが7つの話の最初の2つです。この見方に変えるだけで、候補の物件の半分は最初の段階で外れます。
💡 ポイント
表面利回りは経費も空室も含まない数字です。家賃の2〜3割の経費と、年間50〜80万円程度の修繕予算を引いてから、手元に残る金額で判断しましょう。
⚖️ やり方: 大家に必要な4つの法律と、契約で揉めない書面化(話③④)
法律は4つだけ押さえれば、契約と退去のトラブルの大半は防げます。1つ目は借地借家法。入居者の保護が強く、大家からの解約には正当な理由が必要です。2つ目は民法の賃貸借の規定。契約、原状回復、敷金の扱いを定めています。3つ目は消防法で、住宅用火災警報器の設置義務があります。4つ目は各自治体の条例で、ゴミ出しや建築、町内会など地域ごとの細かい決まりです。
実際にあった話です。ある大家さんが、退去時のクロス張替え費用を全額入居者に請求し、消費生活センター経由で苦情になりました。国土交通省のガイドラインでは、経年劣化の分は大家の負担です。この原則を契約段階から理解していれば、請求額は数分の一で済み、揉めることもありませんでした。
契約で大切なのは、細かい修繕費の負担区分を書面にしておくことです。蛇口のパッキン交換、電球、エアコンの軽微な故障。誰が負担するかを契約書や入居時の案内に書いておくと、入居中の小さな行き違いが消えます。曖昧にすると、年間で数万円から数十万円の追加負担になることがあります。
書面化のもう1つの柱が、入居時の写真です。壁・床・設備の状態を入居者と一緒に確認し、写真とチェックリストに署名をもらっておく。これがあれば、退去時に「最初からあった傷」と「入居中の傷」を区別でき、ガイドラインに沿った請求が落ち着いてできます。
法律を「守るべき義務」として覚えるより、「揉めないための道具」として使う方が身につきます。4つの法律と、負担区分の書面化、入居時の写真。この3点を最初の契約から実行してください。最初の入居者との契約でやっておけば、2人目からは同じ書式を使い回すだけで済みます。
| 法律・決まり | 大家に関わること | 最初にやること |
|---|---|---|
| 借地借家法 | 大家からの解約には正当事由が要る | 更新・解約の条項を確認する |
| 民法(賃貸借) | 原状回復・敷金・修繕義務の考え方 | 負担区分を契約書に明記する |
| 消防法 | 住宅用火災警報器の設置義務 | 各室の設置と作動を確認する |
| 自治体の条例 | ゴミ出し・建築・町内会の細則 | 入居時の案内に載せる |
🔍 マインド: 物件選びは立地・構造・修繕履歴の3つで見る(話⑤⑥⑦)
「あの時もっとちゃんと見ていれば」。購入直後に給湯ボイラーが壊れ、手元に残るのは後悔ばかり。築古には、物件選びの段階でしか防げないリスクが潜んでいます。見るのは3点です。立地、構造と築年数、修繕履歴。
立地は、駅徒歩10分以内か、主要エリアへバス20分圏内が目安です。札幌なら地下鉄駅からの距離と、冬の通勤動線を実際に歩いて確かめます。構造と築年数は、木造で築30年超、鉄筋コンクリート造で築40年超になると価格が大きく下がり、その分だけ修繕の見込みが要ります。
中でも重要なのが修繕履歴です。屋根、外壁、給排水管、給湯器がいつ更新されたか。築30年超で一度も更新されていない場合、購入直後に200〜400万円の修繕費が出るリスクがあります。前所有者から書面でもらえるかを必ず確認し、出てこない物件は、現地で見える劣化からリスクを推測するしかありません。
やってはいけない選び方は3つです。利回りの高さだけで決めて立地の悪さを見落とす。修繕履歴を確認せず、購入直後に大きな出費が発生する。現地を見ずに写真だけで判断する。どれも「知らなかった」では済まない損失につながります。筆者の相談事例でも、この3つのどれかが原因だった物件がほとんどでした。
大家さん、ここで一度立ち止まってみてください。いま気になっている物件の修繕履歴は、書面で出てくる状態ですか。7つの話を最初に固めておけば、5年後には2棟目を自信を持って検討できる大家になっています。今日できる最初の一歩は、下のチェックリストを次の内見に持っていくことです。
- ✅ 家賃の2〜3割の経費と年間の修繕予算を引いて、手元に残る金額で計算した
- ✅ 借地借家法・民法・消防法・自治体の条例の4つを確認した
- ✅ 小修繕の負担区分を契約書か入居時の案内に書いた
- ✅ 入居時の写真と署名つきチェックリストを残す準備をした
- ✅ 駅・主要エリアまでのアクセスを実際に歩いて確かめた
- ✅ 屋根・外壁・給排水管・給湯器の更新履歴を書面で確認した
📌 この記事のまとめ
- 賃貸経営は「仕組み・利回り・法律・契約・立地・構造・修繕履歴」の7つを押さえれば、初心者でも後悔のないスタートが切れます。
- 「知らなかった」で済まないトラブルの多くは、負担区分の書面化と修繕履歴の確認で防げます。利回りは経費と修繕を引いてから見ましょう。
- 今日できる最初の一歩は、この記事のチェックリストを次の内見に持っていくこと。準備を始めた人から、後悔のない賃貸経営が始まります。
札幌・北海道の築古物件のご相談
筆者が所属する Vevelib で、物件の売却・購入・修繕のご相談を受けています。「この物件、直して貸すべきか売るべきか」といった段階のご相談でも大丈夫です。


コメント