📖 見積もり500万円、貯金ゼロ
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家賃は毎月入り、収支は黒字。「修繕はその都度、家賃から払えばいい」と考えていた若い大家さんに、ある年、外壁と屋根と給排水管の見積もりがまとめて届きました。合計500万円。口座の残高はほぼゼロ。青ざめた本人の言葉は「壊れるのが同時に来るなんて思っていなかった」でした。
築古物件の修繕は、ある日突然、しかも複数箇所が同時にやってきます。北海道・札幌の物件は寒冷地特有の傷みも加わり、積立の計画はさらに重要です。本記事では、元設備設計士で、札幌で築古物件を自主管理する筆者が、突発修繕の怖さ、木造・鉄骨・RCの1戸あたりの月額の目安、築年数で積み増す倍率、専用口座で自動的に貯める仕組み、そして足りないときの資金調達を整理します。
読み終える頃には、自分の物件に合った「毎月いくら」が決まり、意志ではなく仕組みで積立を続ける形が手に入ります。
📖 この記事でわかること
修繕積立金が必要な理由と、積み立てない大家に起きる「同時多発の修繕」の実態がわかります。木造・鉄骨・RCの1戸あたり月額の目安、築年数ごとの積み増し倍率、家賃口座と分けた専用口座と自動振替の仕組み、不足時の資金調達先と避けるべき借り方を、表とチェックリストで確認できます。
⚠️ 考え方: 築古の修繕は「同時に」来る。積み立てない大家のリスク
「修繕費はその都度、家賃から払えばいい」と考える大家さんは多いですが、築古物件では危険な考え方です。修繕は、ある日突然やってきます。特に怖いのが、複数箇所が同時に壊れるケースです。給湯器の交換は1台15〜25万円(寒冷地仕様は高め)、屋根の雪害修理は30〜80万円(北海道は頻度が高い)、木造アパートの外壁塗装は80〜150万円(10〜12年に1回)、配管トラブル(凍結を含む)は10〜50万円。すべて大家の負担です。
実際にあった話です。札幌の築28年の木造アパートで、冬に給湯器が3戸同時に故障し、一度に60万円以上の出費になった大家さんがいます。冒頭の大家さんは、外壁・屋根・給排水管という「10年に1回」の項目が同じ年に重なりました。どちらも、予測できたかと言えばできなかった。だからこそ、先に貯めておくしかないのです。
積立がないと、修繕のたびに「払えるか」で判断することになります。払えないと先送りになり、先送りは別の記事で書いたとおり、小さな修繕を大きな修繕に育てます。逆に積立があれば、修繕は「突然の出費」ではなく「予定された支出」になり、業者選びも見積もりの比較も落ち着いてできます。
設備設計の現場で見てきた経験からも、建物の劣化は「一定のペースで進む」のではなく「あるとき一気に表面化する」ものです。屋根と外壁と配管は、同じ時期に建てられ、同じ時期に寿命を迎えます。同時に来るのは偶然ではなく、構造上の必然です。
修繕積立金は、賃貸経営の生命線です。家賃収入の一部を機械的に積立に回す習慣が、経営の安全弁になります。次の章で、自分の物件の「毎月いくら」を決めましょう。
💡 ポイント
築古の修繕は複数箇所が同時に来ます。予測できない出費に備える唯一の方法が、家賃の一部を先に取り分ける積立です。
🧮 やり方: 構造別の月額目安と、築年数で積み増す倍率
積立の目安は、建物の構造で変わります。劣化のスピードと大規模修繕の費用が違うためです。1戸あたりの月額で、木造アパートは8,000〜10,000円(劣化が早く、外壁塗装の頻度が高い)、軽量鉄骨造は10,000〜12,000円(木造より持つが、サビ対策が要る)、重量鉄骨造は11,000〜13,000円(耐用年数は長いが修繕単価は高め)、RC造は12,000〜15,000円(大規模修繕が高額になりやすい)が目安です。
たとえば6戸の木造アパートなら、月6万円ほどの積立が目安です。年間72万円、10年で720万円が貯まる計算になります。筆者の札幌の木造アパートでも、1戸あたり月1万円を目標に積立を続けています。10年に一度の屋根・外壁塗装に150万円かかっても、慌てずに対応できる金額です。手取りが少ない場合は上限を狙わず、下限から始めて続けることが何より大事です。
築年数が進むほど、修繕の頻度と金額は増えます。標準額に倍率を掛けて計算してください。築10年までは1.0倍(軽微な修繕中心)、築11〜20年は1.2倍(給湯器交換・外装の部分補修)、築21〜30年は1.5倍(外壁塗装・屋根の補修)、築31年以上は2.0倍以上(給排水管の更新・大規模修繕)。
築20年を超えると、給排水管の更新や屋根の葺き替えなど、1棟あたり300〜500万円規模の大型修繕が控えます。ある木造アパートでは築32年で給排水管をまとめて更新し、6戸で総額480万円かかりました。築20年を過ぎたら、積立額を必ず見直してください。築古物件の収益性は、積立をどれだけ確保できるかで決まると言っても過言ではありません。
冒頭の大家さんの物件は木造8戸・築29年でした。目安は1戸1万円×8戸×1.5倍=月12万円。「家賃の3割近い」と驚いていましたが、それを貯めていなかった結果が、500万円の見積もりと残高ゼロの口座です。積立は利益を減らすものではなく、利益を「本当の利益」に変えるものです。
| 物件種別 | 1戸あたり月額の目安 | 築年数による倍率 |
|---|---|---|
| 木造アパート | 8,000〜10,000円 | 築10年まで1.0倍 |
| 軽量鉄骨造 | 10,000〜12,000円 | 築11〜20年は1.2倍 |
| 重量鉄骨造 | 11,000〜13,000円 | 築21〜30年は1.5倍 |
| RC造 | 12,000〜15,000円 | 築31年以上は2.0倍以上 |
🏦 マインド: 専用口座で自動的に貯める。足りないときの借り方
修繕積立金は、家賃収入の口座と分けて管理するのが鉄則です。同じ口座だと、つい生活費や運転資金に使ってしまいます。運用のポイントは3つ。物件ごとに専用口座を開設する(ネット銀行なら維持費ゼロ)。家賃の入金日の翌日に自動振替を設定する(毎月手動だと続かない)。引き出しの条件を自分でルール化する(「修繕費用のみ」と明文化)。
筆者は物件ごとにネット銀行の口座を分け、毎月1日に自動振替する設定にしています。手を動かさずに貯まる仕組みです。残高を見るたびに「あといくら貯まれば次の修繕に対応できるか」が見える状態は、精神的にも楽です。積立は、続ける仕組みづくりが9割。意志の強さに頼らない設計にしましょう。
どれだけ計画的に貯めても、想定外の出費で足りなくなることはあります。そのときの選択肢は、金利の低い公的な融資(審査に1〜2か月かかる)、取引のある地方銀行のアパートローン、地元の信用金庫の融資(担保と実績次第で柔軟)、自己資金からの一時補填(翌年以降に積み増しで戻す)です。札幌では、地元の信用金庫が築古物件向けの修繕に比較的柔軟な印象です。日頃から取引を作っておくと、いざというときに動きやすくなります。
避けたいのは、消費者金融やカードローンでの一時しのぎです。金利が高く、毎月の資金繰りを大きく圧迫します。冒頭の大家さんは、公的融資と自己資金で当面をしのぎ、翌月から専用口座への自動振替を始めました。3年後、次の外壁塗装の時期には積立から払えたそうです。「あのときの500万円は、積立を始めるための授業料だった」と話していました。
修繕積立金は、賃貸経営の生命線です。木造なら1戸あたり月8,000〜10,000円、築20年を超えたら1.5〜2倍。家賃口座とは別の専用口座で、自動振替の仕組みにする。不足時は公的融資が第一候補。まずは今日、自分の物件の「毎月いくら」を計算して、専用口座を1つ開くところから始めてください。
- ✅ 自分の物件の構造と築年数から、1戸あたりの月額目安を計算した
- ✅ 築20年超なら倍率を1.5〜2倍にして見直した
- ✅ 家賃口座とは別に、物件ごとの積立専用口座を開いた
- ✅ 家賃入金日の翌日に自動振替を設定した
- ✅ 引き出しは「修繕費用のみ」とルールを決めた
- ✅ 不足時の相談先(公的融資・地元の金融機関)を先に把握した
📌 この記事のまとめ
- 築古の修繕は複数箇所が同時に来ます。「その都度払う」では、500万円の見積もりと残高ゼロの口座が同時に来る日が必ずあります。
- 目安は木造で1戸あたり月8,000〜10,000円、築20年超なら1.5〜2倍。家賃口座と分けた専用口座に、入金翌日の自動振替で貯めましょう。
- 不足時は金利の低い公的融資が第一候補で、消費者金融は避ける。まずは今日、自分の物件の「毎月いくら」を計算して、専用口座を1つ開いてください。
その見積もり、頼む前に見せてください
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